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伊万里陶芸通信


急須と日本茶


普段使いで、いつも身近にある「急須」… 
最近は、お茶をペットボトルで飲むことも増えてきています。また、日本茶も昔と比べると、深蒸し茶が好まれ茶葉も変わってきているといえるでしょう。

私たち日本人は、日本の良さを見直し、美容と健康によいリーフの日本茶を飲むことが、今の現代人にとって、スローライフと日本文化を考えるよいティータイムの時間となるのではないでしょうか。

ここでは、「急須と日本茶」暮らしの豆知識

と題して、急須の話、お茶の話、また弊社で急須に対しての質問・疑問などの多いことをQ&Aでまとめてみました。




     注器の名称

お茶を淹れる道具にはたくさんの種類があります。普段よく使う注器について説明します。

急須

急須注ぎ口と直角に持ち手がついたもの。多くは右利き用に作られている。左利き用の急須を作る作家やメーカーも若干います。
急須を持ったときのバランスの良さが注ぎやすさです。持ち手を下にして立たせたとき、バランスを保って立つのが理想だとよくいわれます。持ち手は胴体と一体化しています。
急須の持つ手の親指で蓋を押さえながら、最後の一滴まで絞り切るようにして使う。容量が大きいとこういった所作はできないから、片手で持てる300ccくらいが最大だろうか。素材としては陶磁器のほかに小さな鉄瓶、木に拭き漆を施したもの、変わったところでは錫の急須もあります。錫は熱伝導率が早いので、熱湯を入れるほうじ茶などには向かない。


バランスが良い急須バランスがいい急須は立つ

ポット

ポット注ぎ口と正反対の側に、縦に持ち手がついたもの。紅茶やほうじ茶などたっぷり淹れたいときに使うものや、中国茶を淹れるときに使う茶壷、煎茶道で使われるものなど。煎茶道ではポットではなく「急須」と呼ぶ。炉で湯を沸かす共手の土瓶(または急須の形をしたもの)は「湯缶(とうかん)」といい、趣味人にとってはおいしい煎茶を淹れるための特別な道具のようです。


土瓶

土瓶注ぎ口の垂直上に持ち手が前後についたもの。持ち手には竹や蔓(かずら)など胴体とは異なる素材を使うことが多い。持ち手と胴体が同じ素材のものは共手土瓶と呼ばれる。もともとは、直火にかけられる煎じ土瓶が始まりだが、火にかけられる土瓶は今ではごくわずかとなっています。煎じ土瓶は1リットル以上の大きなものが多いが、お茶用の土瓶は大きくても700cc前後が一般的です。


宝瓶

宝瓶「ほうひん」と呼ぶ。陶製の茶こしのついた片口に、蓋がついたような形をしたもの。持ち手がないものがほとんどだが、なかには持ち手がついたものもある。上級煎茶や玉露をいただくのに適しています。


絞り出し

絞り出し宝瓶と形は似ていて、小さい茶器がほとんど。そのまますっぽり手におさまるくらいの大きさ。最後の一滴まで絞り出すようにしてお茶を淹れる。茶こしはない。茶葉が出るのを防ぐため、口部分に筋がついている。名の通り絞り出すための茶器で、少量をいただく玉露などに適している。


鉄瓶

鉄瓶鉄瓶は、使い始めに茶葉を入れて煮込むなど、土鍋や粉引のうつわと同じく「慣らし」をする必要がある。そうすることで、茶の成分であるタンニン鉄が反応して、内側がコーティングされ、鉄のにおい(金気)が消される。すべては長く気持ちよく使うためです。鉄瓶の扱いでご法度は、内側を洗うこと(触ること)。錆び止めにつけてある酸化被膜と使っているうつに自然についた水垢(コーティング)を剥がしてはいけない、ということです。きれい好きな人には水垢が溜まっていくのは堪え難く、つい洗ってしまいがちです。また、鉄瓶にはそのまま使い続けて問題ない錆と、修理を要する錆がある。大抵は使い続けていい赤錆だが、気になる場合は作り手に一度見せてみるといいでしょう。
鉄瓶で湯を沸かすと水がまろやかになるといわれます。鉄分がとれるのは事実ですが、なかには内側を琺瑯(ほうろう)でコーティングしたものもあり、その場合鉄分はとれない。これは海外を意識して作られる鉄瓶に多く見られるが、なかには錆によるクレームを回避するためにコーティングしているものもあります。


湯冷まし

湯冷まし湯の温度を調整するために使う。片口のような形で小ぶりのものが多い。煎茶や玉露など、じっくり味わうお茶を淹れるときに使います。



急須や土瓶を買い求めたとき、注ぎ口にホース状のビニールがついている場合があります。これは弊社が出荷する際に、破損しないようにしていることで、液だれ防止の道具ではありません。とくに弊社が取り扱っていますオリジナルの急須は、何もつけなくてもきちんとお茶が出るように考えて注器を作っています。また、ビニール製のものは衛生的にもよくないのでおすすめしません。




     技法の話

焼きものの成形や装飾などに使われる用語の意味や、陶磁器・陶器の代表的な技法について簡単に解説します。
とくに急須や土瓶などは、他の器と比べパーツが多く、作るのに手間と時間を要します。

以下に紹介する技法では「ろくろ」と「鋳込み」が急須づくりに向いています。

成形

ろくろ

蹴ろくろ遠心力を使って土を回しながら形作る。やきものがある程度乾いたら、ろくろに置いて不要な部分を刃物で削り、形を整えていく。一人前になれば、一度にたくさんの量を作ることができる。現在では動力(電気)を使って回すものがほとんどですが、足で回す蹴ろくろ(左写真)や手で回す手ろくろもある。

● 急須職人の林潤一郎さんによる、「蹴ろくろ」で急須を作っている様子を
  動画で見れます。
 ・USTREAM (急須のろくろ工程すべて:約38分) →http://www.ustream.tv/recorded/10394731

 ・ YouTube(急須の持ち手部分のみ:約3分) →http://www.youtube.com/watch?v=Qb6SoqGr6zg


手びねり

紐のように伸ばした粘土を下から積み上げ、へらなどを使って凹凸を慣らしていく。粘土を手だけで形作るものすべてをいう。「紐づくり」も手びねりに入ります。

押型(タタラ)

石膏型の上に板状に伸ばした粘土を乗せ、押して成形する。皿や鉢など同じ形をたくさん作るものに向く。
弊社の取扱い商品では、斉山窯(大田恵さん)がタタラ成形のものが多いです。

型打ち

ろくろと押型の複合技。ろくろで引いた粘土を石膏型に置いてたたいて形作る。不定形をたくさん作るのに向いている。

鋳込み

石膏の吸水性を利用した技法。石膏型を作り、そこに泥漿[でいしょう](どろどろの粘土)を流し込んで形作る。泥漿の水分は石膏に吸収され、固体分は石膏型に沿って残る。土瓶や花瓶など、ふくろものと呼ばれている口がすぼまったものを成形する際に威力を発揮します。
急須や土瓶は、ほとんどがこの技法によるものです。



下絵と上絵

やきものには「下絵」と「上絵」があります。素焼きしたものに直接絵を描くのが下絵で、絵付けの後に釉をかけて焼成する。下絵の器は、表面を金属片でひっかいても絵が取れることはない。一方、上絵は釉をかけて一度焼いたものの上から絵付けをし、その後低温(800℃前後)で焼いて絵を焼きつける。焼きが甘かったり、釉と顔料の相性が悪いと上絵が剥がれることもある。上絵は、有田焼や九谷焼に見られるように、赤、黄、紫、緑、金など鮮やかな色の顔料を使って描かれるものが多い。
「釉裏紅(ゆうりこう)」は、酸化銅で描いた後に釉をかけて還元焼成(酸欠状態にして焼く)したもので、釉の裏側が紅色に見える美しい色が特徴です。(※酸化銅を釉として使う場合は「辰砂[しんしゃ]」と呼ぶ) 
「鉄絵」は、鉄分を含んだ顔料を使って描かれ、焼成すると茶色に発色する。絵柄には、なずなや、植物の十草のような、まっすぐな線を縦に規則正しく描いた「トクサ(麦藁)」、横に何本も線が描かれる「独楽」などがある。ろくろを回転させながら描いていく独楽は、筆を置いた場所に自動的に線が一周して模様ができあがるが、トクサは垂直に線を描いていくから、技術のいる技であります。

白磁と粉引

「やきものは、白さを求める歴史」とよく言われる話。豊臣秀吉の時代、佐賀藩主、鍋島直茂が朝鮮の陶工、李参平を日本に連れ帰ったのも白いやきものへのあこがれからだった。当時の日本人は、人さえ連れてくれば何でもできると思ったようだが、原料がなかれば白磁は作れない。李参平が泉山(佐賀県)で磁器土を見つけたことは、奇跡のような話である。また、愛媛の砥部焼は、砥石を採取する際に出る屑を利用したことに端を発する。
以上は磁器の話ですが、磁器よりもはるかに長い歴史をもつ陶器は、古くから白く美しい器を作る試みがなされ、さまざまな技法が生まれました。今ほど精製されていない土が使われていた頃は、焼き色を美しく見せるために、白い土を刷毛で塗るなどして焼いていた。化粧土の始まりである。化粧土のなかでも特に白い土で覆ったものを「粉引」と言って区別するのは、白さを求めた特別の努力の現れである。化粧土の使い方によって、うつわには装飾的要素が付加されていく。近年注目されている英国のスリップウェア(一珍技法)は、化粧土で模様を描いたものである。二色程度の粘土で鳥や魚など具象を描いたのは民芸の代表作家、バーナード・リーチ。化粧をした粘土を引っかいて模付けする「掻き落とし」という技法などもあります。三島手もこの化粧土の応用。生乾きの素地に印刻などで凹面を作った後に化粧土をかけると、刻印面だけ白っぽくなる。




     急須・茶碗のお手入れ方法

急須のお手入れ方法①

急須は洗いづらく、汚れが残りやすいもの。茶渋や臭いが残ると、お茶の香りや味に影響することもあるので、汚れは丁寧に落とします。注ぎ口などは小さな歯ブラシを利用するとよいでしょう。

急須のお手入れ方法②

粉引や焼締などの土ものは、使う前に水につけ、十分に水分を含ませます。こうすると、土の粒子の隙間が埋まり、臭いや汚れがつきにくくなります。

茶碗のお手入れ①

磁器などの茶碗の汚れは、熱めのお湯でよく洗い流し、やわらかなスポンジで軽くこすります。
絵付けの部分は丁寧に。特に金彩は傷つきやすいので、十分に気をつけて扱いましょう。

茶碗のお手入れ②

土ものは水を吸い込み、なかなか乾きにくいもの。洗ってすぐにしまうと、臭いカビの原因になることも。最後に熱湯を通し、十分に自然乾燥させてからしまいます。



     日本茶の種類

煎茶

煎茶 国内で最も生産量が多いお茶で、日本茶の約8割を占めています。
 摘んだ葉を蒸気で蒸し、揉みながら乾燥して、まっすぐに伸びた形のお茶に仕上げます。細かくよれた茶葉は、丹念に揉まれている証拠です。
 煎茶の特徴は、清々しい香りと、渋みの中にもほんのりと甘みが感じられる味わい。水色は淹れ方によって変わりますが、理想とされるのは緑がかった金色透明。きれいな黄緑色です。
 産地や季節によって、味わいが変わるのも煎茶の魅力の一つですが、香り、味ともにもっとも美味しいとされるのは、4月下旬から5月初旬の八十八夜前後の新茶を摘んでつくられる一番茶です。


深蒸し煎茶

深蒸し煎茶 深蒸し煎茶は、煎茶と同じ工程でつくりますが、茶葉を煎茶より時間を長く(60~120秒)かけて蒸します。この製茶法は、昭和30年代、静岡県中部で始まりました。比較的、新しいタイプのお茶といえましょう。なお、深蒸し煎茶でも、特に蒸し時間の長いものは「特蒸し茶」と呼ばれています。
 ふつうの煎茶よりも香りは弱いですが、渋みが抑えられた濃厚な味が特徴です。
 蒸し時間が長いために、お茶の葉の繊維質がもろくなり、ふつうの煎茶よりも茶葉は細かく、粉状のものが多く混じっています。茶葉の色は黄色みを帯びていますが、水色は粉状のものが湯に浮遊するため、濃い緑色に出ます。


玉露

玉露 製茶工程は煎茶とほぼ同様ですが、煎茶が太陽の光を浴びた新芽でつくるのに対し、玉露は「覆下栽培」という、管理された日蔭のもとで成育した新芽からつくられます。
 茶摘みの約20日前後から茶畑に日よけの柵をつくり、黒いネットやよしずなどで覆って直射日光を遮るのです。この栽培方法により、旨みの成分であるテアニンを含むアミノ酸が多く含まれる茶葉ができあがります。
 渋みが少ない、まったりとした旨み、玉露独自の覆い香もこうした製造過程によって生まれます。
 水色は透明に近い黄色。茶葉は濃い緑色で、細かくよれているほど上質といわれます。


抹茶

抹茶 抹茶は、玉露同様、覆下栽培でつくられた茶葉からつくられます。茶摘みの1カ月前から、直射日光を遮って新芽を成育し、摘んだ茶葉は蒸気で蒸し、揉まずに乾燥させます。そして、茎や葉脈を取り除き、茶肉だけを取り分けたものを碾茶(てんちゃ)といいますが、これを石臼でひいたものが抹茶です。抹茶一粒はお米のような形をしており、その直径は2~3ミクロン。一粒が細かく、鮮やかなうぐいす色のものほど上質といわれ、こくと旨みも増します。
 湯に溶いて飲む抹茶は、茶葉そのものを飲むことができるため、茶葉に含まれるビタミンC、ビタミンE、カロテン、食物繊維などを丸ごととることができます。美容と健康にとてもいいですね。


芽茶

芽茶 煎茶や玉露の製造工程で細かい葉片になってしまったものの中から、芽の部分だけを集めたお茶です。茶葉の柔らかい部分である芽は、ちぎれてしまったときに丸くなり、粒状になります。
 水色は濃い緑色で、茶葉はよく丸まったものほど上質とされています。
 こくのある濃厚な味わいで、渋みもあり、頭をすっきりさせてくれるお茶です。何煎も飲めるのが特徴ですが、お茶の抽出時間を誤ると、濃く出すぎてしまいます。


茎茶

茎茶 煎茶や玉露などの荒茶を仕上げる工程で、取り除かれた茎や茶がらを集めたお茶です。
 水色は薄くて、茎特有の草のような若々しい香りと、さわやかな味が特徴です。
 また、元の茶がらが上質なら、茎茶も上質になります。特に、玉露の茎を集めたものは「雁が音(かりがね)」と呼ばれ、清涼感のある独特な風味が珍重されています。
 なお、ふつうの茶葉のように、何煎もお茶が出ないタイプのお茶です。


粉茶

粉茶 芽茶同様、煎茶や玉露の製茶工程で葉が壊れ、細かくなってしまった茶葉を集めたお茶です。
 お寿司屋さんで多く使われているほか、ティーバックなどに加工されます。
 茶葉は、鮮やかな緑色。水色は濃い緑色で、粉状の茶葉が沈殿するため、ややにごります。
 味は濃いですが、後味はさっぱりしているのが特徴です。


番茶

番茶 もともとは、遅摘み用の茶葉でつくるお茶をいいましたが、製茶技術の発展と市場が高級煎茶を重視する傾向になったため、現在では一般に下級煎茶のことを番茶と呼ぶようになりました。荒茶を仕上げる工程で選別された煎茶の古い葉、かたい葉が使われたり、一番摘みや二番摘み茶のあとにとった茶葉を原料とする場合もあります。煎茶と比べると水色は薄く、甘みも少ないのが特徴。軽くてさっぱりした味わいです。
 また、日本各地にはその地方の食文化に根ざし、独特の製法でつくられていたり、飲まれているお茶が数多くありますが、それらも番茶と呼ばれています。京都府の京番茶もそのひとつです。製法や飲み方もいろいろで、地方の番茶には、岡山県の美作(みまさか)番茶、高知県の碁石茶(ごいしちゃ)、徳島県の木頭番茶(きとうばんちゃ)などがあります。


京番茶

京番茶 京都府の宇治地方でつくられているお茶です。
 かつては玉露の新芽を摘みとったあとに遅れて下のほうから出てくる芽、一番摘みで残った芽や葉を摘んで、釜炒り製法でつくっていましたが、現在では、蒸し製法でつくられています。煎茶や玉露の三番茶、四番茶を茎がついたままで蒸し、揉まずに天日乾燥するのです。揉まないため、茶葉は葉そのものの形をしています。
 水色は透明感のある茶色。香ばしい香りと、さっぱりした味わいが特徴です。


ほうじ茶

ほうじ茶 製茶工程を終了した番茶や煎茶を強火で炒って、独特の焙焼香(ばいせんか)をつけたお茶です。主に番茶を炒ったものが出回っていますが、良質な煎茶の茎を炒ったものなどもあります。
 茶葉は褐色、水色は茶色。香ばしい香りと、さっぱりしとした味わいが特徴です。
 茶葉に含まれるタンニンや、カフェインが少ないので、子供やお年寄り、体が弱っている病人などの体にもやさしいお茶です。
 古くなった煎茶をフライパンで炒れば、簡単に自家製ほうじ茶をつくることができます。また、香りがなくなってきたほうじ茶も同様に炒ると、香ばしい香りになります。


玄米茶

玄米茶 煎茶や番茶などに、煎った玄米を1対1の比率でブレンドしたお茶をいいます。香ばしい玄米の香りと、すっきりとした味わいが特徴です。
 昭和初期、京都の茶商が正月の鏡もちを割ってできた細かいもちの破片を炒り、お茶に混ぜて飲んだものを製品化しましたが、その後、大阪の茶商がもちの代わりに干し飯を煎って茶に混ぜて売り出しました。これが、今日の玄米茶の始まりといわれています。
 玄米茶といっても、実際に使われているのはもち米、もしくはうるち米です。どちらの米を使うかで多少味が違ってきますが、一般的にもち米のほうが香りが高く、上級品とされています。


釜炒り茶

釜炒り茶 直火にかけた高温の鉄釜に新芽を入れて炒り、揉みながら乾燥させたお茶です。
 これは中国緑茶と同じ製法で、15世紀前後、渡来した中国人によって九州地方に伝えられたといわれます。そのため、現在も釜炒り茶は佐賀県、熊本県、宮崎県でつくられており、九州地方で愛飲されています。
 茶葉は煎茶よりも薄い色で、球状または半球状に丸まっているのが特徴です。
 水色は、薄くてきれいな金色。煎茶や玉露などの蒸し製茶よりも香り高く、その香ばしい香りは釜香(かまか)といわれています。
 味は、渋み、苦味がなく、すっきりとした味わいです。


手揉み茶

手揉み茶 焙炉(ほいろ)という手揉み製茶の揉乾燥作に用いる製茶用器具や釜などを用い、茶葉を手で揉みながら乾かしてつくった煎茶です。製茶機械が開発されるまでは、お茶はすべて手揉みでつくられ、技法によって数多くの流派もありました。
 現在は、製茶工程のほとんどが機械で行われるようになり、手揉み技術を持つ人も減少して、生産量はごくわずかになっています。
 茶葉は、やわらかい芽を使い、両手で茶葉を挟んですりあわせながら、少しずつ乾かします。熟練された手は、茶葉の形状を整え、1枚の葉を針のようによっていきます。
 形状がかたくて細いほど、上級品になります。





    日本茶の成分と効用

日本茶の研究は、ここ数十年で急速に進んでいます。
抗がん、抗菌、動脈硬化予防など、さまざまな効用が解明されつつあり、アメリカやヨーロッパでも、ヘルシーフードとして注目されています。

カテキンとビタミンでがん予防

 今、もっとも期待されている日本茶の効用が、抗がん作用です。胃がんにかかる危険度を比較すると、一日に日本茶を飲む量が3杯以下の人を1としたとき、10杯以上飲む人は0.8と各段に低いことが分かっています。
 日本茶に含まれるカテキンが、体内の細胞が突然変異してがん化するのを防いだり、がんの転移を抑制するという、マウスを使った実験結果も報告されています。
 また、日本茶はがん予防のビタミンACE(エース)と呼ばれる、β-カロテン(体内でビタミンAに変わる)、ビタミンC、Eが豊富。それらがカテキンと結びつくことで、その効果はよりアップするのではないかといわれています。

抗菌作用で食中毒を予防

 カテキンの強い殺菌作用も見逃せません。普通に飲む濃さの10分の1から2分の1程度の薄い日本茶でも、食中毒の原因となるぶどう菌やボツリヌス菌が死滅することがわかっています。日本人の習慣になっている食後の一服のお茶には、実は食中毒を防ぐ効果もあったというわけです。生ものを食べる時や梅雨時期などは、意識して飲むといいと思います。
 また、カテキンは風邪のウィルスに直接作用し、その働きを弱める効果も認められています。風邪予防にうがいをするなら、水よりも飲み残したお茶でするほうが効き目がありそうです。

心と体の疲れを癒す

 修行僧は座禅を組む際、お茶を飲んで眠気を覚まし、頭をすっきりさせたといいます。これは日本茶に含まれるカフェインの働きによるもの。
 一杯の日本茶には、カフェインが約15~100mg含まれ、中枢神経に働きかけて眠気を払い、脳の働きを高めます。また、疲労感を解消する効果もあるので、スポーツ中の水分補給としても最適です。
 以前、話題になったのが、リラックス効果。日本茶の香りには数百種類の香気成分が含まれ、なかでも青葉のような香りの青葉アルコールには、気持ちをおだやかにする効果があるといわれます。

食後の一杯が虫歯と口臭を防ぐ

 日本茶には、歯磨き粉に使われているフッ素が多く含まれています。虫歯菌が酸をつくり、この酸が歯のエナメルを溶かすことで虫歯になりますが、フッ素には酸が侵入するのを防ぐ働きがあります。
 また、日本茶のカテキンを加えた水溶液の中に虫歯菌を加えると、数時間で死滅することから、その効果も注目されています。
 さらに、カテキンの強い消臭作用が口臭を防ぎます。この効果を利用したガムもたくさん市販されてきました。

豊富な食物繊維の整腸作用

 あまり知られていませんが、日本茶は食物繊維の宝庫です。食物繊維に、腸を刺激して便秘を解消する働きがあることはご存じのとおりです。さらに、腸内の発がん物質を吸着して排泄するため、大腸がん予防にも効果が期待できます。
 ただし、日本茶に含まれる80%以上が不水容性のため、飲むだけでは摂取できません。おすすめは茶葉を食べること。お茶の食物繊維の吸収率は不明ですが、ミキサーなどで細かくした茶葉や、市販の食用茶などを料理にとりいれてみるのもよいでしょう。抹茶も茶葉そのものですので食物繊維がとれます。

美肌に、ダイエットに

 ビタミンCは、新陳代謝を活発にし、シミの原因となるメラニンの発生を防ぐなど、美容と健康に欠かせない栄養素。日本茶は、そのビタミンCの重要な供給源なのです。果物や野菜のビタミンCが熱に弱いのに対し、日本茶に含まれるビタミンCは熱に強いのが特徴です。
 それだけでなく、日本茶には皮膚や細胞を正常に保つβ-カロテン、血行をよくし老化を防ぐビタミンEがバランスよく含まれているので、美容効果もあるといわれます。カテキンには脂肪の分解を促進させる働きがあることから、ダイエット効果も期待されています。



    日本茶の言い伝えと慣用句

お茶は日本でも1000年以上の歴史を持ち、私たちの暮らしにしっかりと結びついています。
生活に欠かせないものだからこそ、言い伝えや慣用句にはお茶にちなんだものがたくさんあります。

 ごくありふれた、当たり前のことを「日常茶飯事」といいます。茶飯事とは、お茶を飲んだり、ご飯を食べること。昔から、お茶がいかに日々の生活と深く結びついたものであったかがわかります。
 また、お茶の効能もよく知られていたようで、健康のために毎日飲むようにすすめる言い伝えがたくさんあります。 「朝茶は七里帰っても飲め」 一里は約4km。お茶を飲み忘れたことに気がついたら、28kmの距離を帰ってでも、飲みなさいという意味です。
 また、お茶をその日の縁起かつぎと結び付けているものもあります。 「茶柱が立つと縁起がよい」 茶柱が立つのは滅多にないことなので、茎が茶碗の中で立ち、人に話さなければよいことがあるという意味です。縁起かつぎをもう一つ。 「茶瓶の口を外に向けると来客がある」 主に山口県で使われています。
 なかには、科学的な根拠がある言い伝えも。 「宵越しのお茶は飲むな」 お茶は淹れたての、香りも味もよいうちに飲みなさいという意味。実際に一晩おいたお茶は、たんぱく質が腐敗して微生物が繁殖しやすく、食中毒の原因にもなります。まさに先人の知恵といえるでしょう。
 反対に、まったく根拠のないものもあります。 「茶を飲むと色が黒くなる」 お茶には美白効果のあるビタミンCがたっぷり含まれているので、お茶を飲んで色黒になることはありません。貴重なお茶をたくさん飲ませないための言い伝えかもしれません。

「茶腹も一時」 わずかなものでも、一時しのぎにはなるという意味です。お茶を飲んだだけでも、しばらくは空腹をしのげるということですが、お茶のカフェインが胃を刺激するので、空腹時にお茶だけを飲むことはおすすめできません。お茶を飲む前に、ちょっとしたお菓子を食べましょう。
 人間関係の教訓となるような言い伝えもあります。 「茶碗を投げたら綿で抱えよ」 相手が怒って茶碗を投げてきたときは、割れないように綿で受けとめなさいという意味。腹を立てている人には、おだやかな態度で接したほうが賢明だという、現代にも十分通用する教えです。
 お茶を使った慣用句は多く、現在でも使われています。「邪魔をする、ごまかす」といった意味を持つものが目立ちます。 「茶々を入れる」 お茶には、おいしく飲む茶葉の適量があります。適量以上の茶葉を加えると台なしになることから、他人のことに口を出して邪魔をすることをいいます。
 お茶のたて方に由来しているものもあります。 「お茶をにごす」 その場をいい加減にごまかすこと。茶道の心得のない人が、適当なやり方でお茶を淹れ、その場をつくろったことに由来します。

「無茶苦茶」 作法にかなってお茶をたてることを「茶になる」といい、反対に流儀のないことを「無茶」ということから、道理や常識のないことをいい表しています。
 最後に、千利休の弟子、山上宗二の言葉とされる名言をご紹介。 「一期一会」 もともとは、茶席のおもてなしの心得で、「どんな茶会も一生に一度の茶会と心得、今日の茶会にのぞみなさい」という意味ですが、「今日会えた人でも、明日は会えないかもしれない。出会えたそのときを大切にしなさい」という人生の教訓にも使われています。この言葉のとおり、人との出会いを大切にしていきたいものです。




    お茶がら活用法

おいしく飲んだ後のお茶がらを、そのまま捨てていませんか?
お茶がらにはビタミンや食物繊維がたっぷり残り、茶葉の抗菌作用や消臭効果も変わりません。
料理に、お風呂に、掃除に、とことん活用しましょう。

肌を清潔に保つ、お茶がら風呂

 お茶がら(1回分)をガーゼなどでつくった袋に入れて湯船に浮かべます。風通しのよいところに置いて、乾燥させた茶がらを使ってもよいでしょう。ビタミンCが豊富に残っている、一煎目を出したあとのお茶がらを使います。
 茶葉に含まれるカテキンには殺菌作用があるので、水虫やニキビ、湿疹などの皮膚のトラブルを改善する効果が期待できます。
 また、茶葉のさわやかな香りで、心身ともにリラックスできます。
 浴槽に茶渋がつかないよう、お湯はその日のうちに抜き、シャワーなどでよく洗い流します。白や薄い色のタオルは、茶褐色に変色することがあるので、気をつけましょう。

豊富なビタミン、お茶がら洗顔

 まず、石けんで洗顔し、よくすすぎます。洗面器にぬるま湯をはり、1回分のお茶がらを入れます。両手でお湯と一緒にお茶がらをすくって、顔にあてます。化粧水をパッティングするようにパタパタと、茶葉で顔全体を軽くたたき、よく洗い流します。
 肌を白くするビタミンCがたっぷり含まれているので、日焼けした肌におすすめです。

栄養たっぷり!お茶がら料理

 お茶がらには茶葉の成分の約75%がそのまま残っています。お湯の中に溶け出さないβ-カロテン、ビタミンE、食物繊維など、栄養がたっぷり。風味も十分あるので、さまざまな料理に利用しましょう。
 酒、しょうゆ、砂糖などで煮つめて佃煮に。フライパンで炒って、ジャコや海苔、ゴマなどと混ぜてふりかけに。乾燥させて粉末にし、天ぷらの衣やホットケーキの生地、ヨーグルトなどに混ぜ合わせてもよいでしょう。
 お茶がらはよく水切りして、少しずつラップフィルムに包んで冷凍しておくと便利です。

効果抜群、お茶がら消臭剤

 茶葉のカテキンには脱臭効果があります。乾燥させたお茶がらを市販のティーバックや、牛乳パックでつくった小さな容器などに入れれば、消臭剤として再利用できます。また、カテキンには殺菌作用もあるので、微生物の繁殖を抑えられる、ダブルの効果も。
 冷蔵庫やクローゼット、靴箱などの隅に置き、1週間に2回ほどお茶がらを取り替えると、より効果的です。
 お茶がらに水が残っていると、カビの原因にもなりますので、しっかり乾燥させてから使います。

隅々まできれいに、お茶がら掃除

 玄関先やベランダなどは、湿ったお茶がらをまいて、ホウキで掃きます。お茶がらの湿り気がしっかりとホコリを吸着するので、ホコリが空中に舞い上がることなく、隅々まできれいに掃除できます。
 また、畳はよく水分を絞ったお茶がらをまき、ホウキで掃きます。カーペットやじゅうたんは、乾燥させたお茶がらをまいて、掃除機で吸い取ります。こうすると隙間に入り込んだゴミや、取れにくい糸くずなども、お茶がらと一緒にきれいに取り除けます。
 さらに、床はよく水気をきったお茶がらをカーゼなどの袋に入れて、磨きましょう。床に光沢が出ます。




     急須 Q&A

弊社で急須に対しての質問・疑問などの多いことをQ&Aでまとめてみました。

Q:立つ急須はよく良いと言われますが、なぜですか
急須がこのように立つという事は、バランスが良いという事です。バランスが良いという事は、重心がよいことで変に重みが偏らず、手に馴染み持ちやすい証拠です。昔、作られた急須は、使い勝手を重視し、ほとんど全て立つものでした。今では、形や装飾重視で使い易さが軽視されたものも多くあります。
立つ急須
Q: 急須や土瓶を使うとき、蓋の穴は注ぎ口の方に向けるのが正式?
急須の穴を注ぎ口の方向にすると、急須内のお湯がグルグル回り、茶葉がよく回りほどよく広がるようです。 一方、穴の向きが違うと茶葉の回転が悪いようで、茶葉もひろがりにくいのです。 つまり急須の蓋の穴の位置でお茶の美味しさに違いが出るとのことです。以前テレビ番組で透明な急須を使って放送されていました。
Q: 急須の持ち手に小さい穴が開いているのはなぜ?
この穴は、急須を軽くするために、中が空洞になっていて、焼成時に中の空気が膨張して、やきものが割れるのを防ぐための空気穴です。
使用時の注意点として、急須をご使用後は、たらいなどに浸け置きや、食器洗い機などで洗わないでください。穴から水が入り抜けにくくなります。水が入ってしまった場合、水を抜く方法として
① 長時間、天日干しにして水を抜く
② 電子レンジ「強」で、3分間ほど温めて水を抜く(電子レンジの中がちょっと濡れてしまいますが・・・)
でも、この方法が早いです。
特に、水がたくさん入っている場合は、「ブッ!」と水が噴き出すように出てきます。
持ち手部分の穴
Q: 急須の蓋だけは販売されていないのですか?
急須は本体と蓋を一緒に焼くために、蓋だけというのは基本的に作っていませんので、販売されていません。
本体と蓋を一緒に焼くのは、焼成前は土が柔らかいため、本体の持ち手と注ぎ口の重みで、焼成時に急須の口(蓋をのせる部分)が楕円形になってしまうのを防ぐためです。
「急須の着せ替え蓋」という企画で、製品化されたものもあり、それは蓋だけでも買えるようですが、ほとんど見かけません。
Q: かご網ステンレス製の茶こしのみ販売されていますか
お店によっては、何種類かのステンレス茶こしを販売されているところもあります。百貨店、陶器店、スーパーなどでもよく見かけます。
ただ、現在は種類が多すぎて、全部の急須に入るものがあるとは限りません。寸法も直径・高さ・変形型など、さまざまですので、購入される前に使用されている茶こしを、お店に持参され、確認されることをおすすめします。


Q&Aの最終更新日 : 2023-08-10